WEB丑の刻参り

最近学校の裏サイトでよく話題にのぼる。
やり方は簡単。呪いたい相手のメアドを誰にも気付かれず毎日1時から3時の間に指定されたサイトに打ち込むだけ。
最初は私も信じてなかったけど、最近は信憑性のある書き込みも多い。隣のクラスの佐伯が学校の階段から落ちて骨折したのもこれのせいだという。来月の総体は絶望的だと顧問の教師も言っていた。可哀想な話だけれど、それをかげで喜んでいる人間もいるのだろう。思い出とかの綺麗な話じゃなくって、内申とかそういう現実的な話も絡んでくるのだから当然か。
誰が誰を呪っただとか、誰か代わりに呪ってとかそんな書き込みがとても増えた。
斯く言う私もそんな胡乱な話に頼ろうというのだから人のことは笑えない。期待が半分と恐怖が半分。罪悪感はあまりない。どうせ捕まっても罪に問われるわけじゃないから。


掲示板にあった書き込みから例のサイトへ飛ぶ。
黒の背景にテキストボックスが浮いているだけのシンプルなサイトだ。
今日は記念すべき100日目。どうやら誰にも気付かれずに達成できそうだ。
正直100日も忘れずにできるとは思わなかった。掲示板でも寝落ちしたとかでの挫折の書き込みも多かったし。たぶん、神さまにも準備期間ってものがあるのだろう。
あいつのメアドを入力して決定(コピペはできない。手打ちじゃないとダメ。あいつのメアドが長過ぎてイライラする)
通信完了の文字が出て終了。
私は大きく息をつくと、携帯を閉じた。ばれないとは思っていても、どうやら緊張していたらしい。携帯を机に置き、伸びをして肩をまわす。
お茶でも飲もうか、と立ち上がったとき、机の上の携帯が震えた。
こんな夜に誰だろ、そう思いながら開いた携帯には知らないアドレスからのメールが届いていた。
メールには『了解 次よろしく 逃げたらみんなで潰す』と書かれていた。
あて先間違いだろうか、なんとなく気味が悪くなってその日はすぐに寝てしまった。


結論からいうと呪いは成功した。
彼女はいじめにあって、学校には来なくなった。おかげで好きな人とも付き合えるようになった。
ただ、そのかわりちょっと忙しくなった。おかげで寝不足だ。あと変わったことといえば毎日夜中の1時から3時の間に私の携帯にメアドが届くようになった。今は二人分届いている。準備がまた大変だ。


http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%91%E3%81%AE%E5%88%BB%E5%8F%82%E3%82%8A