パッと

手を離すのが最近の流行。
自立できるということを誇示したくて仕方がないらしい。「はい、パッ!」と声をかけるとおっかなびっくり手を離す。
ただし、最長不倒時間は5秒程度。あと、よくお腹で支えるというズルをやる。
マギー師匠ばりのふてぶてしさで、ほらできたと主張する姿が妙に和む。


当たり前だが、いきなりてくてくと歩いていったりはしない。
私に寄り掛かりつつ、それでも離れようとしつつ、だんだんに自立していくものだ。
それを思うと現代では社会に出ることはいきなり放り出されるに等しい気がする。
多少バイトはしつつも、ほぼ仕送りで生活している人間がいきなり稼ぐのはなかなか難しいものがあるだろう。
だからといって、就業体験を学校がさせるべきとは思わないし、企業側も受け入れが難しいのは目に見えている。
それに就業すれば大人というものでもない(ある程度の前提ではあるが)


我が子が大人になるころは、一体どんな通過儀礼が必要とされるのだろう。
きっと求められる能力は私たちの頃とは比べ物にならないはずだ。多分、気の利いた助言の一つもできやしない。できると思っているならば、それはそれで間違いだし。


ああ、一つだけ言ってやれることがあるな。


キミは手の離し方を私から学ぶことはなかった。
初めから手を離す勇気と、転んでも立ち上がる根性を具えていた、と。


あと、ズルは致命的に下手だったぞ、と。