血液型

「血液型何型だったけ?」


このようにいささか時流に沿わない話題を振りまくところが立花の良いところである。
そして、本日の優しさはこれにて終了。
空気よめ。あほ。死ね。
そんな牧歌的雰囲気に包まれた放課後の演劇部の部室には、今日も今日とて男が二人。


「お前に個人情報を開示する義務はない」
「つまり、B型ということだな。了解」
「知ってるなら確認するな。で、一昔前のベストセラーでも古本屋で買ったか?」
「いや、丁度読んでた雑誌に占いのページがあったから聞いてみただけだ。喜べ。来週は最悪の運勢だから是非で歩け。あと赤いものは身につけるな。折角だから献血行って血液全部抜いてもらえ」
「鷲頭相手でも全部は抜かんぞ。しかし、世間はそういうのが好きだな。個人的にはどうぞご利用下さいと思うが」
「当たってるような気がするというのが楽しいんだろ。あとレッテルを貼ると余計な思考をしなくて良い。B型だしな、という理由でお前の性格にも諦めがつく」
「またそれだ。そろそろそのB型差別は犯罪になるぞ」
「だが、人口比率的にB型を対象にした本がベストセラーのトップになるのは統計学的に見て有意だろうが」
「出版社がほぼ同数刷って書店に置いたんだろうさ。それに、だからと言ってB型を貶して良い訳じゃないだろう?」
「貶してる訳じゃない。分析の結果だ」
「ほう、言ったな。ム所のメシは冷たいぞ?」
名誉毀損くらいで実刑がでるか、馬鹿」
「実際、履歴書に血液型を書かせる会社はあるらしいな。訴えたら勝てるんじゃないか?」
「医療関係とかには必要だろ。選考を左右すると問題ありそうだが」
「書かせるところは選考にも影響してるだろ、常識的に考えて。案外社員の比率とかは調整してそうだがな」
「同じ型ばかりの会社だと、事故があっても輸血が楽で良さそうだな」
「ともかく、世間のB型に対する扱いは不当だ。人権侵害だ。われわれは断固抗議する! 血液型診断を信じる人間には正義の鉄槌を!」
「で、具体的にどうする?」
「まずは雑誌等の記事の撤廃だな。あとは公教育で血液型診断の有害さを周知徹底。もちろん関連書籍は発禁だ。次に差別を受けた人々への救済だ」
「ほうほう。それで?」
「目には目を、歯には歯を。全ての加害者をあぶり出し、そいつらの血液型を自らが貶した血液型に変えてやる。否は言わさん。脊髄ぶち抜いて無理やり移植してやる」
「それが、差別ってやつだろうが」
「ふん、だからA型は言うことが細かくて嫌いだ」