成長

子どもの、特に小さな子どもの成長が早いのは、世話をする人間の時間を吸い取るからだと聞いたことがある。
そうでもなければ日々できることが増えていくあの時期の成長速度は説明がつかない、と。
確かに生まれたばかりの頃は、世話だけで一日が飛ぶように過ぎる。
吸い取られるというのもあながち言い過ぎではないのかもしれない。
まあ、吸い取られる方としては多少は加減をしてもらいたいところではあるが。


ただ、それに耐えられない親もいるのだろう。
虐待や育児放棄のニュースは強いて探す必要もない。
彼らはただ奪われるだけの時間を過ごすことに耐えられなかったのだろう。
大人になるということは、きっとただ奪われるということに耐えるということなのだろう。
満ち足りるまで吸い取って初めて耐えられるようになるのか、それとも育ってきた環境など関係なく個人の資質次第なのかもしれないけれど。


しかし、奪われる奪われると書いてはみたが、実際はそんなに酷いものでもない。
ご先祖さまから連綿と続く、歴史の糊しろを作っているのだと思えば愉快な話じゃないか。
個人的には最高の糊しろにしたいと望むばかりである。