口唇期

なぜ指を舐めると落ち着くのだろう。
二ヶ月の娘は今しきりに指を吸っている。
当たり前のことだが、指と乳はちがう。
指は甘くもなければ、栄養もない。
つまりは吸うという行為が快楽なのだろう。
口唇期とは良く名づけたものだ。
吸われる指は快楽を生まない。


ところで私はくちづけが好きではない。
特に粘液の交換が嫌いだ。べたべたするし。
それでも強いてしないわけじゃない。
ただ、思うのだ。
ああ、私は指なのだな、と。


唇が触れる度、私は指を思うのだ。