平等な神さま

むかしむかし、あるところで神さま同士の話し合いがありました。


「あー、明日から天地創造が始まるわけだが、誰か意見はあるかね」


一際輝かしい神さまが一同を見渡しました。あまりに輝かしいのでもちろん顔は見えません。


「平等な世界が良いと思います」


若い神さまの一人が言いました。
みなしきりに頷き反対意見はないようです。


「しかし、平等とは言っても同じものばかり作るわけにはいかんぞ。見ていて面白くない」


偉い神様が言いました。ある意味失言です。
それを聞いて一人の野心あふれる神さまが言いました。


「機会の平等はどうでしょう? 努力すれば誰でも頂点に立ちうるというのは素晴らしいことです。誰もが夢を見て暮らすべきではないでしょうか? また、これならば同時に多様性も確保されます。きっと様々な物語を生むことでしょう」


ちょっと本音が透けて見える発言ですが、偉い神さまのつぼを押さえておくことも忘れません。
どこにでも如才ないひとはいるものです。素晴らしいですね。
ただ、それを聞いて一人の真面目な神さまが反論しました。


「しかし、機会の平等というが持って生まれた能力や場所、時期などにも左右されるだろう? それを保障するのは不可能なのではないか? それならば結果の平等の方が良いと思うがね」


大変正論です。正論ですが、その発言で偉い神さまがちょっとむっとしました。
建前上は全知全能なのですから、真面目な神さまは少し考えてからものを言った方が良いと思います。


「ほかに意見はあるかな?」


ほら、偉い神さまにスルーされてしまいました。正論だからといって常に正しいわけではないのです。


「地区ごとである程度の偏差内に収まれば良いのじゃないか?」
「いやいや、種族移動が流動的になった場合それでは片方が駆逐されてしまうぞ」
「平等の単位をどうするかも問題だぞ。種族単位にするのか、地区単位にするのか、それとも個別にもたせるのか」
「個別は無理だろう。生存期間はランダムにすると、先日決まったばかりじゃないか」
「それなら平均寿命まで生きたとした場合の割り振りにすれば・・・・・・」
「おいおい、それじゃ期間設定はどうする。一日毎に清算していかないと誤差が出過ぎないか?」


議論百出です。
やたら声の大きいひともいれば、話を全く聞いていないひともいます。
ある神さまは全ての発言を記録しているようですが、一切発言はしていません。あと寝てるひともいます。


ゴホン!


偉い神さまが咳払いをしました。
ぴたりと議論が止まり、みなが偉い神さまを注視します。


「あー、みなの意見は理解した。実にさまざまな意見があったが、どれもこれも正しいようにわしは思う。おそらくこのまま永遠に話し合っても結論は出ないと思う。じゃから、わしに一任してもらいたいのだがどうだろうか?」


皆が深く頷きます。
実はすでに大半のひとたちが飽きていたのです。ただ、偉い神さまの手前終わるに終われなかっただけなのです。
ようやく偉い神さまの口から結論が語られます。


「うむ。せっかくこれだけ平等について考えたのだ。みなの意見を平等に採用しようではないか」


やんややんや。
そして、神さまたちは三々五々に帰って行きました。


こんな風に今の世の中はできあがっているのです。ぶっちゃけ丸投げですよ。
でも、まあそんなものですよね。神さまは御自身の姿に似せて人間を作られたのですから。