2009-03-10 胎児の夢 片説 彼女は何も知らない、何も見たことがない。 ただひたすらに海に揺蕩う。 彼女は何を想うのか。彼女は何を夢見るのか。 彼女は世界の狭さを知らない。 彼女は内なる広さを知らない。 彼女にあるのは逆さの天地と二つの心音。 時が満ちれば世界は頭上から落ちてくる。 夢と現の境界で、初めて彼女は息を吸う。 泣いて彼女は忘れてしまう。 始まりのない胎児の夢を。 闇ですらない胎児の夢を。