ノイズとチューニング

子どもがよく話しかけてくるようになったが、基本的に何を喋っているかは不明だ。
ニコニコと頷いていれば機嫌がよいので困りはしないけれど。
ただ、よく耳を傾けていると意味のある単語が聞き取れたりするのが面白い。
必死でチューニングを合わせているこの感覚は、外国の放送が混じった深夜ラジオを思い出させる。まあ、こちらはノイズではないけれど。
テリーって誰だよ(何かを指差して良く言う。詳細は不明、解明は未定)


そんな中、今日初めて「いってらっしゃい」を口にした。
毎朝のお出迎えでは言ったことがないのに、近所の人とすれ違った時につるっと出てきた。
とても驚いた。すぐさま褒めてやりたいところだった。
しかし、一つ問題が。
言われた近所の人は「いってらっしゃい」を言われたと全く認識してないということ。
子供用に最適化された私の耳だけが「いってらっしゃい」を受信できたのだった。
この場合、いきなり褒め出したらまるっきり電波を受信した人じゃないか。


結局曖昧な表情のまま挨拶して別れた。
これで子どもが金輪際「いってらっしゃい」を言わなくても、私はそれを責められない毎朝、殺伐とした玄関先になったとしても。
「おかえりなさい」の時はきっと邪魔されずにすむと思う。


ただ、問題は本当に私の空耳にすぎないかもしれないということだ。
もしかすると子どもさえも私の妄想の産物かもしれない。
そうなると毎朝妄想の納豆臭で起こされているということになるのだけれども。