おさえる

手を握るだけですごい力で振り払われる。
鼻や耳を綿棒でほじろうとしようものなら、折れよ綿棒! と渾身の力で歯向かう。
だから、危ないって。
だっこしているだけならそこまで不満はないのに不思議なものだ。


少しでも不自由さを感じると劇的な反応を示す。
自分ひとりじゃ大して移動もできないのに。
できることが少ないからこそ、その少しの自由を必死で守るのかもしれない。
大人だって時間がないとかお金がないとかそんなことでいちいち苛々するわけだし。
金持ちケンカせず。
ただ、大人でも身動きとれない状態で鼻をほじられたら嫌がると思うけど。
でも、お金払ってまで耳かきしてもらいたい人もいるしなあ。
子供が見たらきっと不思議に思うだろう。


大人になると身動きがとれないくらい押さえつけられるということがない。
ただ、見えない何かで動きが取れないなんてことは沢山ある。
それは外的な圧力だったり内的な規範だったりいろいろだが、ストレスに感じることには違いはない。


子供からはその壁は見えない。
たまにはほんとにあるのかな、と渾身の力で振り払ってみることも必要だろう。
矩を踰えないのは七十過ぎてで良いのだから。