へその緒

しまってあったのを久しぶりに見た。
例に漏れず桐の箱に大事に納めてある。
そんな風習が無い外国の人が空き巣に入ったら貴金属かと思って肝を潰すだろう。
もしくは珍味かと思って持って帰るかもしれない。
まあ、日本人でも夜中にへその緒とすれ違ったら怖くて仕方ないと思うが。


どうしても盗まれたくない人はダミーとしてスルメでも入れておくと良いだろう。
間違ってもそちらを子供に見せてはいけない。
本当の親が烏賊なんだと勘違いして旅に出るおそれがあるから。


ところで、へその緒は一体どちらに所有権があるのだろうか。
もともと無い器官だ、という視点から見れば子供のものになるだろうし、いやいやお腹の中のものは全部母親のものだ、という意見だってもっともらしく聞こえる。
ちなみに私は親から譲り受けてはいない。まあ、くれと言ったこともないが。


一般的には、なし崩し的に親が所有権をもつのだろう。
子供からしてみれば、自分のへその緒を不思議とは認識しても、それ自体には思い出がない。へその緒で親を認識しているわけではないのだから。
ただ、どうしたって親は繋ぎとめようと思うのだろう。口うるさく言ったり、いろんなことを制限したり。犬を繋ぐリードのように。


生まれてしまえば、子供にへその緒は必要ない。
親だってそうありたい、と思う。