泣く

寂しくなると死んでしまうのは兎じゃなくて赤子。間違いない。
今日はベッドに置いただけで泣くようになった。
きっと水平方向を感知する機能が備わったに違いない。


それに、兎に角泣き方が激しい。
全身全霊をかけて泣いている。
脱水症状になるんじゃないかと心配になるが、あやしている最中はこっちも必死なので実はそれどころじゃなかったりする。
私の中にはあれほど泣いた記憶はない。そしておそらくこれからもないだろう。


それはきっと泣くことの意味が変わったからだ。
私はもう誰かに訴えるために泣くことはおそらくない。あるとしても多分そのときは嘘泣きで十分だ。
あと、泣くのは自分の為だと知っているし。


でも、赤子だって本当に訴えたいだけなら大声を出せばいい。
涙腺から水を出す意味は無い。
私たちは泣くことの社会的意味を知っているけれど、我が子が知っているはずもないのだから。


ただ、私たちは生まれてきてすぐとにかく泣く。
何の得もありはしないのに。その瞬間を刻み込むかのように。
きっと損や得じゃなく、もっと本質的な、存在の証明に根ざしたものなのだろう。
泣けば助けてくれるわけじゃない。泣けば自分に還れるのだ。
生まれてきたばかりの自分に。