家庭内競走

文字通り、家庭内で競走している。


仕上げの歯みがきが終わり、歯ブラシをコップに入れながら立ち上がる。
するとすでに洗面所の扉に手をかけた娘1が「洗面所まで競走な?」と、にんまり笑う。
言うが早いか、扉を開く娘1。そして、間に合わないと知りつつ追いかける私。
タイムは1秒を切るくらいだろうか。大体百戦して百敗する超絶ハンデ戦
本当に子どもは勝つのが好きだな。
ただ、大人になったからって負けるのが好きなわけじゃないんだぜ?


「洗面所まで競走な?」
私は立ち上がりながら体重を爪先に掛ける。狭い廊下ではスタートが勝負を決する。
いつまでも負けてはいられない。大人の本気を見せてやるっ!
「せんし」
非情な娘1の言葉に脳内のスターティングランプが誤作動。紫色の煙を吐き出し止まる。
勝負は始まる前に終わっていたのだ。


本当に子どもは勝つのが好きだなあ。