その行先は

飛んだり跳ねたり撥ねられたりすることが増えたので、治癒魔法「いたいのいたいのとんでいけ」を頻繁に唱えている。
家人が唱える場合は私に飛ばしてくるので、積極的に断末魔の叫び声をあげ絶命するよう心がけている。
大体において子どもがげらげら笑って終了になるわけだが、こんなに死んでたら私の残機が危険だ。ボムで回避するか、反射魔法を使うかしないとな(ゲーム脳


外国で同じ風習があるのかは知らないが、我が家だけでも毎日結構な痛みを不法投棄している。
このことからスペースデブリのごとく、大量の痛みが大気を行き交っていると予想される(痛い保存の法則)
なんでもないタンスにわざわざ脆弱な小指を激突させるのは、世界を飛び回る見えない痛みがあなたにぶつかった証左に他ならない。


残念ながらこの痛みを減らす方法は見つかっていない。今現在も子どもは増え、「いたいのいたいのとんでいけー」と痛みが不法投棄され続けているからだ。
また、親からそれを学んだ子どもは、けんかをしたり、ずるりと転んだりした時、自然と自分に魔法を唱えるようになっていることだろう。


しかし、子どもを責めてはいけない。
子どもから痛みを取り除くのは親の義務であり、社会の要請である。
褒められたことではないが、子どもの痛みを放り投げることを禁止すべきではない。
大人としての唯一取りうる態度は、例えどれほど痛かろうとも、黙して屈み、歯を食いしばって耐える以外にない。
逆に言えば、痛みを投げ出さないのが大人の証明ともいえるのではないだろうか。


まあ、脆弱な小指を強打した際はそんなタワゴトを思い出すと痛みがまぎれるかもしれないこともないよ(小指を握って転がりながら)