這い寄る混沌

洗い物をしながら、ふとテーブルの上を見た。
テーブルの端に置いてあった携帯が少し動いたような気がした。
地震か、とも思ったが、特に揺れは感じなかった。それに隣の花瓶は動いていない。


誰かのいたずらかと考えたが、我が子はまだ立てないし、相方は不在だ。
気のせいか、と再び洗い物に戻ろうとしたその時。


私は見た。


テーブルの下から、小さな白い手が携帯をがっちりと掴むのを。
いや、そんな! あの手は何だ! 窓に! 窓に!


欲望と好奇心のもたらす成長速度は、実に名状し難いものだな。