電脳コイルの時代

科学が十分に進歩し、googleが順調にデータベース化を為し終えた頃。
まず始めに全てのテストから暗記科目が廃止された。
全ての情報は公開され、検索すればコンマ1秒とかからず表示される世界では記憶容量を試す試験が必要なくなったためだ。正確さについてはgoogleαからgoogleθまでの多言語データベースによるクロスマッチによる保証がなされ、情報信頼度が10段階で表記される万全さだ。
入試は全て口頭試問か記述式にならざるを得ず、センター試験も強度のジャミングで体調不良を訴える学生が3桁を越えた辺りで廃止になった。
今では小学校の小テストも生体鍵付きで配布され、一人ひとり問題が違う。


しかし、だからといって夏休みの宿題が無くなるわけではなく、今も変わらず朝顔やへちまの観察などをやっている。先生は10倍速で確認するだけだからずるい。
また、フルカラー表示になろうとも絵日記はある。データで提出は可だが、写真は不可。
ラジオ体操は家でもできるようになったが、判子は物理レイヤにしか押してはくれないし、プールの塩素で手がしわしわになる男子が後を絶たない。


子どもの記憶はいつだって鮮明だ。


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