外の世界

窓を開けるたびに、窓枠まで寄ってくる。
洗濯物を干す時も、取り込むときも必ず足元に居る。
正直言って危ないので遠ざけておきたいのだけれど、どれだけ遠くにやっても床に置けばすぐさま外の世界への扉へ向かう。
お気に入りのおもちゃにだって見向きもしない。お茶の入ったマグだって蹴散らしていく。
ご飯を食べていてさえ、外で影が動くたびにそちらを向いてしまう。まだ歩けない胃袋(二つ名)と言われるくらいなのに!


子供にとって、それほどまでに外の世界は魅力的なものらしい。
定位置に居座るとずっと外ばかり眺めている。
天気なんて関係ない。どんなにどしゃぶりの日でも外は輝きに満ちているようだ。
置き去りにされる内の住人としては寂しい限りだが、まったく興味をもたれないより健全だと思うことにしよう。


今はまだ飛び出さないけれど、いつかは外の世界へ駆け出していく。
そのとき、一瞬だけこちらを振り返り、迷った目でこちらを見るのだ。
私はなんと声を掛けるだろう。
「待って」? 「行け」? それとも、「連れてって」?


いやいや、追い抜いて外で待ってるくらいの心持でないとね。
まだまだキミは一人じゃ歩けないんだし。
とかなんとか言ってる間に置いてかれるんだろうなあ。前しか見てないからなあ。